2013年12月31日火曜日

引退のご報告

2013年のシーズンをもって、フルタイムのプロロードサイクリストから引退することを決めました。

大学を出てから3年間という短い時間ではあったものの、一年一年が挑戦の連続であり、濃密な時間でした。毎年シーズンが終わるたびに、ずっしりとした一年分の重みをオフに降ろす気持ちでした。2013シーズンを終えて、その重荷に再びチャレンジしなくても良いことに、少々ほっとする反面、やはりちょっとさびしい気持ちがあります。

2014年は一般企業で働きながらではありますが、いくつか面白い企画に携わります。
アマチュアサイクリストとしてもチャンピオンシステムコーポレートチーム所属でレースにも出る予定です。

プロとしての経験をなるべく還元していきたいと思います。

西薗良太


2013年11月30日土曜日

Bicycle Club No.345 1月号の対談記事に寄せて

みなさま

先日Bicycle Club からファンクショナルトレーニング(が最も近い概念だと考えている)トレーニングに関する記事が出ました。私も一部福田さんと、小畑さんとの対談で登場しています。


以下記事に補足を

・「2週間でポジションを合わせた」
正確にはポジションは変わっていないけど、きちんと動けるようになったので痛みがなくなった。ちなみに2週間はツアー・オブ・オマーンまで2週間でした。


・「BC:西薗さんはパフォーマンスの代表みたいな方だったんですよね。 西薗:当時はまだイノベーティブな話。それまでのトレーニングはポイントを押さえてパフォーマンスで一気に勝つという発想がなかった」とありますが、要するにパワーメーターで厳格にトレーニングを管理する手法のことを指しています。大学時代からBluewychと協力して導入しました。

・ソールスターのインソールはめちゃめちゃ固くて、正しい踏み方ができないとあっという間に痛くなります。



2013年11月20日水曜日

サイクリングを楽しむために ルート探索の方針

ご無沙汰しております。先日ツール・ド・いくちじまにて優勝し、最高の形でシーズンを終えることができました。

ところで表題のサイクリングコースの件ですが、知人の吉田氏の記事にインスパイアされて記事を書いてみます。

問題意識
プロ選手をやっていると、いきなり全く知らない土地に放りこまれて、練習せよというシチュエーションが多々ある。また、地元でも毎日定番コースを走っていると飽きがくるために新規開拓が不可欠

現況の最適解
1.Google mapとGarmin Connectをフル活用したルート考案->2.Garmin Edgeによるルートガイドを利用しながらの実走しながらイメージあわせ->3.走行後、Garmin ConnectやStrava上での検証、次回計画

順に説明します。

1.ルート考案
ルート考案にはGoogle mapをメインに使用しています。
ルートを選ぶにあたっていくつか私の中で基準があって、
・車が少ない
・信号や住宅地をなるべく通過しない
・トレーニングの目的や気分に沿ったアップダウン
が主な評価基準になります。
こういうルートを探すためのポイントも経験から気づいてきました。

・地形をGoogle Mapの「地形」で確認

「地形」をオンにすることで、スタート地周辺の起伏を調べます。

・農道や県道を探す
基本的に国道など、ある街からある街までを最も便利に結びつける道路はサイクリングに向きません。激しい交通量と、自転車の存在を全く想定していない路肩の狭さにイライラするばかりです。そこで多くは山へ向かうと思うのですが、こちらは当然アップダウンが厳しいことが多く、適当なアップダウンで気持よく走るのは難しいことも多いです。そこで、農道や県道を探します。農道は基本農作業車以外あまり通りませんが、大型のトラクターなどが通ることを想定して、そこそこ快適な道が多いです。

・どうやって探すのか
Google Map上で「航空写真」を利用


起伏はそこそこ、畑や田んぼが多く見えるあたりがポイント。

この手法で道をえらんでいくと、ルートがある程度複雑になるので、Garmin Edgeが必須になってきます。

・Garmin Connectでルート作成
シクロワイアード記事など参照のこと

2.実際に走って雰囲気確認、当然ルートから外れて新たに探索してもよい。

3.Garmin Connectにデータをダウンロードして、実際に走ったルートを見ながら次回案を練る。

たまにゴール地点だけEdge上でしていして、ナビ任せに走るのも一興。この場合、ナビの設定(時間優先、距離優先、幹線道路回避、など)に注意。

この手法でかなりルート探索の効率が上がりました。

2013年10月24日木曜日

四谷で安藤コーチのスマートコーチングを受けて来ました

皆さま、ブログでは絶望的なスパンでご無沙汰しています。

あれよあれよという間にUCIレースのシーズンが終わってしまいました。この後台風で開催が危ぶまれている埼玉と、生口島にて行われる学連のレースに出場する以外はレースもないので、かなり頭のスイッチを切っています。ちょっとならいいわな。。。と思ってこの数日久しぶりに好きなだけ食べて飲んでをしていたところ、かえって体調が安定してきた感があり、本当にピークコンディションの時の体調は両刃の剣というか、ギリギリを渡っていたことを実感しました。心なしか寒さにも耐性が戻ってきた気がします。(←なんか北京で風邪引いてから寒さに弱い感じがしていたので)

今こそ基礎を見直すべき!と思って同郷は鹿児島の出身で最近スタジオを四谷にオープンされた安藤コーチのスマートコーチングに行ってきました。安藤コーチのブログはこちら

今回受講したのは、いわゆるファンクショナルトレーニングというタイプのトレーニングに対するアプローチの仕方です。

こんな感じで、不安定な状況を作った上で、ペダリングに利用する筋肉を上手に稼働させる練習をしたり

こんな感じで、バランスディスクに綺麗に飛び乗る(写真は飛び乗る直前)練習をして、芯を意識するトレーニングを行ってきました。


ひとつひとつの動作を丁寧に見てもらいながら実感したのは、自転車で必要な身体の使い方の1.エッセンスを抜き出し、2.強調することで、ごまかしが効かない動作が考案されている、ということですね。

自転車には元々それなりに安定化装置がありますよね。速度をつけると、車輪が周ることで慣性モーメントで安定しますし、フォークレイク云々で力学システム的に外乱を受けてもそこそこ大丈夫だったりとか。

身体の方でも骨盤ー背骨ー胸郭周りなど、いわゆるコアの筋肉をうまく使うと自然と身体が安定したり、大きな筋肉を稼働して長持ちする、さらに故障を減らすといった効果が期待できる動かし方があって、非常に大事なのは知られるところです。

難しいのは、自転車の安定化装置に頼っていると、そこの身体の使い方がいい加減でも、結構なんとか走れるところで、うまく意識を出来るようになったり、天才(プロはこれが多い)は最初からできたりと、良い動かし方はなかなか難しい。

安藤コーチが考案されている動作は、良い身体の使い方を意識できないとまず形すらおぼつかない難度でできています。そこに頼れる安定化装置はありません。しかし、アドバイスを受けながら、身体感覚を模索していると、ふと出来るようになってきます。そして体得した感覚を忘れないようにしながら、自転車に戻ると、ペダリングに明らかな改善が見られました。

「ダウンヒルでこの感覚ができいるときはまともに下れるようになったな」とか、「ペダリングでつかれにくいよな」という身体の使い方を再現すると、ぽんっと出来る動作が多かったです。つまり、確かにエッセンスはバイクと同じ。しかし抜き出されているぶんシビア。テストで苦手分野のドリルを解きまくっている感覚?かな。

安藤コーチとお話していると、「天才選手ではないがゆえに技術を言語化する必要に迫られた」と語っていたところが個人的にすごく共感するところでした。

最後にパチリと。ありがとうございました!



2013年7月1日月曜日

強度指向、インターバルのタイプ、ロードレースの特徴

30分間のレースのために、30分間一定ペースでの練習はほとんどの場合効果的とはいえません。実際のレースでは、タイムトライアルを除けば(コースによってはタイムトライアルも)、然るべきパワーの変動があり、各々の区間で特徴的な負荷のかかり方が存在するため、その特徴を捉えた足の使い方を練習しなくては、ゴールまでフレッシュな状態を保つことは難しいでしょう。




図中の二種類の線は、足の使い方を表す線です。Aは15分間一定の出力を出し続けています。それに対して、Bはやや低い出力を5分間保った後に、5分間やや高い出力を発揮し、その後やや低い出力に戻っています。レース中にAのパターンが現れることはほとんどなく、実際にはBのように特徴的な変動があることがほとんどです。この時、Aの練習ではなく、Bの中間の5分間を耐え切るための練習が重要になります。
陸上のならばAの走り方が正解ですが、ロードレースの場合、あいだの5分で遅れればおそらく足切りが待っています。



さらに中間の5分間を耐え切るための能力をどうやったら効率よくつけられるか?
そこにインターバルを導入します。
2つ目の図の中のAは目標とする5分間の出力のイメージです。これを実現するためには、やや出力が高く、やや時間の短いBを、間で十分に休みながら繰り返し行います。
そのココロは、Aの強度・時間を一度に実現するのが現状難しければ、より短い時間で同等以上の強度を出し、間に休みをいれることで、再び十分な強度を再現することができます。すなわち、優先しているのは時間ではなく強度です。

再び十分な強度を確保するためには、然るべき休憩時間が必要です。これが不十分だと足の回復速度をアップさせることが狙いとなるトレーニングになり、Aを目指したトレーニングにはなりません。必要以上に休む必要はありません。ターゲットとなる強度を出せるギリギリの回復時間を設定することで、回復能力に対してもうまく働きかけることができます。

ロードレースでは、一旦遅れると終わりという場面が多く、とりあえずあるレベルの強度が出せないと終わりという場面が多いです。どんなに回復速度が早かろうが、一度でも集団から遅れれば、集団の力が圧倒的です。そこで、このような強度指向のインターバル方法が重要になります。逆に陸上のように、細かなペースのアップダウンがありながらも、ベースの強度がしっかりと存在する競技では、回復速度はより重要なので、回復し切らないうちに、強度をやや落としてもインターバルを行うメリットが大きくなってきます。ロードレースではハードなセクションの後には、下りや集団内でゆるむなど、イージーなセクションがたいてい伴っているものです。

注:5分、10分、15分などの数字は適当なものなので、自身のレースの特徴に置き換えて考えてみてください。

2013年6月29日土曜日

全日本選手権~後半戦


一週間近くかかって、ようやく全日本選手権のことを書くための心づもりというようなものができてきました。結果としては、12周回中半分ちょいでリタイヤという結果で、優勝を狙うという選手としては落差の大きい結果になり、ずいぶん周囲の人たちを心配させてしまったようです。自分の中では予想の範囲内ではあったのですが、改めて結果を受け取ると、涙が出るとか、激しく感情がかきたてられるとか、意識的な部分とは別の深い部分で、なにかすっぽ抜けたようなものが感じられ、この一週間は我慢してそれを放っておくという作業をしています。意図的に何かを放出せずに放っておくというのも、選手としてはなかなか難しい作業で、ある種ここで自己破壊的なトレーニングを行うほうが易しいように感じます。ある程度疲労が溜まってくると、疲労のために疲労に鈍感になっていくことで、更に疲労を無視して突き進むことができるようになっていくというようなスパイラル状態が人間にはありますし、時にはそれがピーク状態を目指すためには必要なのですが、ここ数日完全に休養をとって、改めて前半の疲労を実感します。朝起きて身体が軽いとはどういうことだったのか、自分の中の定義がシーズンが進むに従って、一目盛ずつずらされていっており、改めて本当の休養を通してどれぐらいずれたのかを認識した次第です。

六月に入って、四月からの連戦での抜きどころをうまく見つけられず、休むべきところを休めなかったことで、体調の振幅が徐々に大きくなってきていました。ある日は練習の途中で全く身体が動かず、挫折する日もあるかと思うと、その数日後には絶好調といえるパフォーマンスを示したりといったことが起こり始めてきていました。全日本選手権の日は。。。。あまり良くない日だったようです。

後半戦は八月のツアー・オブ・ユタ(アメリカ、2.1)から始まる予定です。初の高地レースということで、取り組み方に工夫が必要になりそうです。経験、知見のある方は、こっそりアドバイスをささやいていただけると嬉しいです。

2013年6月11日火曜日

全日本選手権タイムトライアルの反省など


レースの世界でうまくいかなかった時には、たらればが多く心に浮かぶ。勝負の世界にはたらればはない。しかしながら、まさに敗れた時に浮かぶたらればは、実際に流された血を反映したもので、その舞台でしか得られない貴重な傷。それは勲章であり、次に向けて見過ごされてはならない傷である。舞台に立たないと傷さえつかない。

今回の反省
・ポジションを作る時間。やはり1週間は少し足りなかった。機材面の準備の事情から、少しずつポジション作りが遅れた。これは、身体を慣らすのと、エアロダイナミクス、パワー発揮のための最適化の時間が足りないことを意味した。さらなる余裕をもったスケジューリングが求められる。

・現場スタッフとのより密なコミュニケーション
特に一般のスタッフとは、全てテストしておく。自分の当たり前は人の当たり前でない。計画しておいたことを失敗すると、試合中の動揺が大きく、取り返しがつかない。不確定要素は徹底的に除く。イメトレも大事。

・パワーメーターのゼロは確実に校正
どうも気温変化からか、表示される値が高止まりしていた。以前にも経験があったのだが、アップ段階でそれほど感覚と差がなかったので油断した。スロープは2回校正したので、問題なかったと思う。

感覚を信じるために、ペース配分、ブラインドの練習を積んでおくこと。

全日本ロードへ向けて、精進しようと思います。

2013年4月26日金曜日

Garminの画面表示考

普段から、練習・レース共にGarmin Edge 800Jを利用しています。昨年半ばから使い始めたのですが、画面表示するに関する考え方が固まって来ました。

まず、これが普段練習するときの基本画面。時間、速さ、距離、パワー、ケイデンス。800Jは画面が大きいので、五つの指標を表示しても見やすい。それぞれの要素に関して、必要なテーマをもって練習します。




これがレース中の基本画面。ポイントはパワーとケイデンスの要素を減らすこと。余分な情報を抜いて、減らすこと。

パワー・ケイデンスを表示しながらレースをやっていた時期もあるのですが、レース中だと練習中にはありえないような、パワーをぽんぽん出さなくてはならない場面があり、それは大部分が耐えきれるわけなので、時間としては短いのですが、いちいちそれを見ていると精神衛生が大変良くない。おいおい、これを繰り返していると死ぬんじゃないか、という心理が働いてしまいがちです。

また、自分がだいたいある出力でどれぐらい耐えられるか。。。というのが経験としてあるわけですが、レースだと結構そのギリギリを頻繁につくんですよね。これも精神衛生上良くない。頭で考えるとひよる。

で、情報を絞る。五感による周囲の情報と、体感だけで、なるべく走る。しかも混戦気味の時ほど、できるだけ何も考えずに、身体がオートマチックに反応するのに任せる。計算すべき要素が多すぎる時には、脳の直感の方が良い仕事をしてくれます。きちんと頭がレースモードに切り替わっていれば、驚くほど正確に本能は限界を知っている。




しかしながら、レースにおいても注意すべき要素が絞られる時があります。長い上りと、安定したエスケープに入った時です。

長い上りだと、ブローアップしないように、身体能力いっぱいいっぱいを使ってついていくことが重要。安定した逃げに入った時も、一定のインターバルで無理のない出力を突くことが重要。こういう時にはパワーを出します。よって、二番目のタイマーページはパワーが用意してあって、指でちょいとフリックしてやると画面が切り替わります。

ケイデンスについて考察するのは例によって思考を取られすぎるので、本能に任せます。

ちなみに、SRMモニタなどを使っている選手だとパワーを消すことができないので、パワー表示部にビニルテープを貼っている選手を結構見ました。(BMCの選手とか)


2013年4月23日火曜日

Brugge ブルッヘ

前期ヨーロッパ遠征の最終日に、拠点のオウデナールデから北上してブルッヘ(Brugge)という街に当チームGM(アメリカ人)、徐剛(中国人)、自分(日本人)、という組み合わせで行って来ました。ベルギー版「水の都」であり、運河と多くの橋、歴史ある街並みは世界遺産にも登録されています。

ロードレースにおいて重要なのはロンド・ファン・フラーデレン(ツール・ド・フランドル)のスタート地点であること。この街にある広場をスタートしてから南下し、オウデナールデ周辺の石畳を急坂をめぐってオウデナールデ市街にゴールします。


GMと私。GM、巡航300W出てます!(マジで)

 徐剛@Brugge



 運河は観光船が出ており、盛況でした


 徐剛と


 ロンドのスタート地点広場。この日はオーケストラの演奏があった


 広場にある、立派な建物



 移動式遊園地(ケルメス)も盛況


行き帰りのルートの小道

束の間の観光でありました。

2013年4月21日日曜日

探検者であること ー トレンティーノを通して


一昨日に「ワールドツアーの中のレース(グランツール、etc.)を除くと最もハードなんじゃないか」(byチームメイトのクリス・バトラー談)といわれるジロ・デル・トレンティーノを完走しました。4日とさほど長い日程でもないながら、2日が山頂ゴール、残りの2日もきつい山岳を含むレースで、クライマーたちがジロの調整に利用するレースです。

photo by Cyclowired



チームとしては、徐剛(Xu Gun)の第1ステージ敢闘賞&8位、第2ステージでグレゴーのエスケープ、そしてクリスが総合18位(バッソやペリゾッティらよりも前)で終えることができ、一定の存在感を示すことができたと思います。地味ですが。。。

僕のハイライトとしては、第3ステージ、序盤から凄まじくペースが上がった最初の2級山岳で、いきなり50人ほどにプロトンが絞り込まれた際に生き残り、クリスのアシストをきっちり続けられたこと。チャンピオンシステムで先頭集団に生き残ったのはクリスと僕の2人だけで、ボトル&食料をチームカーから配給、位置取りの風よけなどをうまく単独でこなして、クリスを最後まで先頭集団に残すことに成功。クリスが単独になって、中盤力を使い果たしてゴールまで残れないという最悪の事態は避ける事ができました。

photo by Cyclowired


第4ステージでも、ゴール40キロ手前の2級山岳のペースアップに耐え抜き、最後の超級山岳までうまくクリスを送り届けました。しかしうちのエースはあのダンシングでよく登るよな(ひとりごと)。最初の山頂ゴールでクラックして自分のリザルトは追求できませんでしたが、クリスで総合勝負というチーム課題のなかではよく役割を果たせました。地味にね。



とまあこのへんが一般的な選手としてのリザルトですが、自分の中でまた未開の地(Terra incognita)にまた脚を踏み入れることができたなと実感しています。

もちろん初めてハイクラスのステージレースを完走したという、自分の中での一歩もあるのですが、最近常々自分が他の選手と異なるアプローチでロードレースに取り組んできたがために、何をやってもひとつの探検であるという感を強くしているから。

日本で選手の育成や枠組みづくりを行なっている人たちからは、どうやったらヨーロッパツアーでよく走ることができる選手の頭数を増やすことができるか、議論が続いています。日本のロードレースはロードレースではなく、できるだけ避けて早くヨーロッパに渡って活動すべきだとか、反対に日本でのプロリーグを充実させて、Jリーグのような体系を目指すべきだとか、意見は多くあります。

そういう中で、自分はロードレースの本質を真剣に見極めようとしてきた人たちと、一つ一つ課題をクリアしてきました。前回ブラバンツ・ペイユの時も、今回のトレンティーノの時も、「おい、正気ではないきつさだが、これ練習でやってきたことと一緒だぞ!だからいけるな!」という確信。

やや穏やかなプロトンでリラックスできるときに、ふと考えることがあります。「この中で19でまともにロードレースを始め、エンジニアリングを学び、ヨーロッパの豊富なレース環境に全く触れずに23までトレーニングをして、フルタイムでレースをするようになって2年とちょっとで走っている選手がいるだろうか?多分いないな」

やっていること全てがチャレンジであり、提案になっています。

そうして、自分なりのチャレンジをしていることを実感するとそれが次のモチベーションとなります。また、多かれ少なかれ選手はひとりひとり違うので、それぞれのチャレンジをリスペクトする気持ちが湧いてきます。

何事も思考停止にならないこと、
批評するよりも、提案して批評される側の方がマシであること、
以上レースを通して雑感でした。

2013年4月14日日曜日

ヨーロッパ遠征3月−4月


皆さん、お久しぶりです。元気ですか?ずいぶんと間が空いてしまいました。

ツアー・オブ・オマーンで中東の地にて、チャンピオンシステムとして初めてレースを走ってから、3月にヨーロッパに渡り、ひと月強の遠征を終えようとしています。予想していた通りの困難あり、予想外のこともあり、しかし良いこともありということで。

オマーン後から3月上旬にコッピバルタリというイタリアの重要なステージレースを走る予定になっていたため、かなり走りこんでヨーロッパに渡りましたが、土壇場でチームの出場がキャンセルになってしまいました。しかも今年のヨーロッパは非常に寒く、拠点のベルギーは雪・雪・雪でトレーニングが思うようにならず、かなりコンディションを落としてしまいました。一昨年のシマノの時とえらい違いだ。写真、3月半ばですよ。信じがたい。


そのまま極寒のフランスで、ワンデー2連戦に挑んだのですが、初日のロワールアトランティックのあまりの寒さに気が狂いそうになり(残り1ラップでDNF。。。)翌日もその疲労を引きずってDNF。さらに左指の腱鞘炎にもいささか苦しみました。この頃になると、(渡欧後2週間ほど経過)あまりの日の差さなさと、寒さに気持ちも沈みがちになり、こりゃいかんわな。。。という感じになってくる。雨・雪と冷蔵庫の中みたいな気温で思うようにトレーニングができない。ここで貴重なヨーロッパ遠征を無駄にするにはいきません。

そこで、同じヨーロッパとはいえ、まだまだ天候のマシなフランス中部の某所に2週間ほど滞在して再起を図ります。
フランス某所の素敵な道たち

天候が人に与える心理的影響というものを思い知りました。この2週間でひたすら登り、時間と距離を乗り込んでリンブルグクラシック(オランダ、ワンデー、1クラス)に出場。気温2度で雪がちらつく中、またもラスト30キロでぶっちぎれ、DNFを食らうも、序盤のエスケープに加わりかけたり、中盤での牽引、後半のアタック処理など、良い仕事をしてチームからも評価してもらえる動きで、これまでよりかなり前向きな内容でした。

リンブルグクラシックの地図
精神衛生もかなり向上して、このレースの後にもトレーニングの手綱を緩めることなく、特にジロ・デル・トレンティーノ(イタリア、ステージ、HC)を視野にいれて質も量もトレーニングを最高潮にもってきました。拠点近くの練習向きの道路も徐々に開発が進み、インターバルも快適に。

で、今週の水曜日にブラバンツ・ペイル(ベルギー、ワンデー、HC)に出場。ベルギーの春先のワンデーはFlanders Classics、すなわちフランドルクラシックと呼ばれる6つのレース(Het Neuwsblad, Dwars Door Vlaaderen, Gent-Wevelgem, Ronde, Scheldeprijs, Brabantse Pijl)からなりますが、そのうちの一つで、レース単体で非常に重要なレースです。さらに日曜日にアムステル・ゴールドを皮切りに始まる、アルデンヌクラシック3連戦を占う意味でも注目を集める試合----(と試合に行ってから気づきました。)正直あまり期待せずにスタートしたものの、リンブルグでなにかカチンとスイッチが入った感があり、位置取りなどの思い切りもよく、首尾よくラスト30キロぐらいまでそこそこに足が残った状況で生き残りました。周りもきつそうで、おっしゃこれでラスト自爆覚悟でテレビに映ったるで!と考えていたら、最終周回に入った直後の登坂でものすごいペースアップがあり、中切れをかき分けまくっていたものの(やっぱ位置取りが悪い)、あともうちょっとの所でセレクションに残れず。しかしながら第2集団でしっかりと完走しました。ちょっと感慨深いものが。。。

火曜日からはトレンティーノが始まります。

最近お気に入りの道

2013年3月4日月曜日

2013サイクルフェスタin桜島

噴煙をバックにどど~んと
by shimano live


昨日、3月3日は2013サイクルフェスタin桜島に出場して来ました。トレーニングがてら、TTとヒルクライムという、ロードレースの基本ともいえる身体能力を確認することができる種目になってます。

地元でプロロード選手をやっている人間は他にいないので、負けるわけにはいかない!。。。のですが、シマノレーシングが合宿のあいまに出場ということで、楽勝とはいかず。

TTは国内でのナショナルチャンピオンジャージの初披露。3位

ヒルクライム1位

総合2位でした(順位合計)

こういう試合から、ロードレースの入り口に立ったということを思い出しながら高校生を眺めていると感慨深いものが。

参加者、ファンの皆さま、大会スタッフの皆さま、完全に居候させていただいたシマノレーシングの皆さま、ありがとうございました。



2013年2月20日水曜日

ドーピング問題に関していくつか


まあ、このことに書かなくてはならないわけですよ。

2/21日付で発売された文藝春秋から出ている雑誌、「Number」に、珍しく国内のメディアがロードレースを取り上げる量としては破格の4ページという分量で記事が出ていた。しかし、そのタイトルは「堕ちた英雄 ランス・アームストロングの告白」というもので、ものすごく競技のネガティブイメージを広げるものである。筆者は及川彩子さんという、自転車以外の競技について多く書かれている方なので、現在のロードレースをどう分析するかについて注目していた。

記事としてはランス個人としての特異な性格にかなり重点が置かれていた(「ソシオパス」っていう人格障害のことを初めて知りました)けれども、UCIが腐っていたことに関してもさらっと触れている。結局USADAの徹頭徹尾まともな感覚がなければ、真実は明らかにならず、自浄作用が働いていなかったことがよくわかる。

そして、そういう自浄作用がうまく働いていないのは、結局のところこの競技のファンの総意なのではないかという感じることがある。そもそもいっときのロックレーシングとか、最近のミケとか、現在の赤いロシアのチームとか、やばい人たちが集まって経済的に成り立つというのは、やはりそこにファンが付くからだと思う。

西洋人は告白すれば赦される文化だから、ああいうのも成り立つんだ、みたいな意見もある。まあ、日本文化圏でピュアピュアに育ってきたからその感覚がよくわかっているとは言いがたいけど、少なくとも当チームの所属選手たちにランスやら他ドーパーのことの話になったときに、あの糞野郎が。。。的な話になるので、ほっとする。色々読んでいる限り、フィニーとかピノッティだってそうじゃないかな。根源的にcheatを嫌う気持ちにそこまで違いはないみたいですよ。

そして、スポーツ選手のドーピング問題を日本人は特に忌み嫌うので、あっちの世界とは関係ない、というのも、そうか?という気がする。

誰だったか、日本人の口から、単純にドーパーだったからろくでもないやつだと決めつけるのはよくない、そもそもほとんどやっているなかで、ドーピングをしても更にものすごい努力をすることがプロトンの中では求められるのだからと、というようなことも聞いた。なんとなくそうか、と思って納得しようとしたが、おいおいそもそもやってなかったせいで競技に残れなかった人間はどうするんだよ、と激しくあとで一人ツッコミを入れておいた。

ミラーとか割に好感をもっていたけれども、「ドーピングを告白して、どれだけそれを改善するための動きをした所で、最初から最後までクリーンに徹していった選手のほうが偉いに決まっている」という某色々とカッコいい選手の話を聞いて考えなおした。更正するのはプロトンに残る最低条件であって、別に誇るほどのことではない。いや、認めない連中よりははるかにいいんだけど、完全クリーンの選手のほうがよっぽどカッコいいぜというところを認めようという話。

ごく最近も、某イタリア人が、出場停止から復帰してチームが見つかったりすると、復帰おめでとう~とか、言っている人は多い。日本人が同じ事をやっても、復帰を望むのだろうか?それとも何らかの見識をもって、彼が無実だったと信じているとか?かなり無理があるぞ。

一度やれば、脳は通常超えられない壁を超えた感覚が焼きつくから、絶対にその後のパフォーマンスを引き上げるよね、という話も選手間でしたりした。世界記録を誰かが突破してきた瞬間に、次々にそれまでの世界記録が破られたりすることがあるよね。あれだって、かなりの部分はイメージがはっきりするからだと思う。ましてや自分の肉体で、薬物が入った状態で「その世界」を見てきたら、薬切れした後でもそこに近づくことは容易になるんじゃないかな。そういう意味では復帰した選手を同列に扱うのもどうかと思う。

当チームは割に新しいチームですが、いらん歴史がないところは気に入っています。

以上、ドーピング問題に関する雑感でした。ファンの目が厳しく、スポンサーに対してプレッシャーを与えることが出来れば、かなりの問題は解決出来ます。

2013年2月6日水曜日

The List - 1月

そろそろシーズン開幕が近い。ロスにトレーニングキャンプに行って帰ってきてから、パタリと更新をやめてしまったblogをさらりと再開しておこうかと思う。

1月に購入したもののなかで、気に入ったもののリスト Kindle本が多い

2013年1月9日水曜日

2013 Boot Camp in California

チームのトレーニングキャンプが始まりました。

まずは15時間ほどかけて、鹿児島から羽田(JAL)、羽田から成田へ乗り換え、成田からロサンゼルス国際空港へ(American Airway)。今回新しくポチったヘッドフォン(Quiet Comfort 15)がかなり役に立ちましたが、やはりしんどいものですね

機内でできるだけ眠って今のところ、時差ボケ解消への道は、順調な一歩を踏み出したといえるでしょう。

アルミの機体がまぶしいアメリカン航空


 地球は青かった。。。じゃなくて、ロサンゼルスの空は青かった。からりとした温暖な気候で、ホテル周辺はロード練習快適すぎ

土曜日にホテル周辺でファンと一緒に走ろう!的な企画があるらしいです。
明日はフィッティングから。。。

2013年1月7日月曜日

2013年の機材を紹介しようーKindle Paper White


自転車選手の移動は長い。
フランス車で縦断ぐらいは平気で毎週のようにある時期もあったし、飛行機で飛び回ってばかりの時期もある。思えばJ-Tourだって、大阪から福島へとか、埼玉から輪島へとか、6時間、7時間のドライブは当たり前(運転してくれるスタッフはいつもありがとうございます)で、結構きつい移動が続く。

移動中の行動パターンは選手にもよるが、それほど多くはない。
1.眠る
シンプルにして、重要。無理があるスケジュールが組まれることも多いので、回復できるときに回復しておく。

2.iPadなどによるWebサーフィン・漫画・動画の視聴
ここ数年、3G回線とつないだiPadがサイクリストの移動の質を向上させている。照明が充分でないことが多いので、漫画もiPad上にダウンロードしてから読むことが主流だ。

3.ノート型の計算機(Macbookとかね)でなにかやってる
これをやっているのは、日本人選手では(外国人選手でも)自分(西薗)以外見たことはない。

4.音楽を聞いている。
iPodなどから音楽を聞いている。傾向として、シマノよりアンカーの方がこだわりが強い。都貴さんも、和郎さんもヘッドフォンやイヤフォンはもとより、ポータブルアンプやらリケーブルにまで手を出している。シマノでこれに匹敵するのは、青柳氏だけ。

以上に加えて、昨年からKindleによって
5.本を読むが選択肢に加わった。

Kindleのおかげで、持ち運びが楽、バックライトつきで暗いところでも読みやすい。
寝るときも、軽い&バックライトによって寝転がって読める。
オススメです。
テクノロジーが選手生活を変えていく。

2013年1月5日土曜日

2013年の使用機材を紹介しようーサングラス


かの有名なblogから引用すれば、いわゆるJawなbone。
泣く子も黙るJawboneだ。

今年からOakleyが使用サングラスになった。言うまでもないことだが、プラスチックにも関わらず、全く安っぽさを感じさせない質感と、ジョイントなど細かなクオリティの良さに驚く

サングラスは変われども、学連時代からいつも変わらないものーーそれはEau de Vie(オードビー)のレンズ。-5.00オーバーの強烈な度数かつ乱視持ちの僕にとって、ハイカーブで素晴らしいクオリティのレンズをフレームに組み込み、期待を裏切らないEau de Vieの技は必要不可欠。

今年もOakleyの純正度付きでは対応しきらないところを作ってもらった。ちなみに調光モデルで、シーズンの90%はこれで過ごす。

2013年1月3日木曜日

威勢よく新年のスタートを決めたいものだけれども


実を言うと、今年は新年のトレーニングを十分な強度で開始することができていない。昨年末、年の瀬に左膝に妙な違和感を覚え始めたのが始まりだった。左の外側の筋肉が張っていたようだったので、新しいペダルシステム(シマノー>スピードプレイ)が煮詰まっていない段階で、腸脛靭帯炎とかになりかけかな?ぐらいに考えて、マッサージなどを増やす程度で特に手を打たないでいた。

ところが、ある日突然ペダリング中に激しい痛みを感じて、その場で一旦停止しなくてはならないほどになった。冷や汗をかきながら再乗車して家に帰ると、すぐに診察へ向かった。腱などに損傷はないらしいことが確かめられ、一安心だったが、左外側広筋の損傷(ある程度の肉離れ)らしい。昨シーズン終わりごろには似た傾向で右の膝に違和感を感じていたのだが、今考えるとこれも筋肉損傷だったのではないか。

全体的に四頭筋群の柔軟性か強度か、その両方が足りない。

数日の休息ののち痛みが落ち着いてきたので、セオリーどおり、低負荷で痛みのない範囲での運動と、温熱療法に入っている。痛みというセンサーがついていると、普段筋肉について学んでいることが実感としてわかりやすく面白い。筋肉の温まり具合で本当に痛みが違ってくるので、ウォーミングアップの効果を普段の何倍もよく理解できる。普通に走ると走り初めが痛いが、こたつに足を入れた後に走りだせば痛くない。わりに順方向にしっかりとした負荷をかけている分には痛くないが、階段を降りるときみたいに、筋肉が伸ばされながら縮む力を発揮している状態(等張性運動といいます)が最も痛む。自転車だと、段差を超えるときに足が揺れるのを抑えこむのにかなり痛んだりする。多分石畳のレースなんかで、ブレずにペダルを踏み込むためには、ペダルを抑えこむための筋力がかなり必要になるのだろう。

2013年1月1日火曜日

2013新春のご挨拶と個人サイト開設のお知らせ


いつも応援して下さっている皆さま、2013年新春あけましておめでとうございます。

いよいよ正式に新チームである、チャンピオンシステムプロサイクリングチーム(チームのサイトは今不調みたいですが)での活動を開始しました。早速真新しいユニフォームを着て、今季の相棒であるFuji SSTにまたがり、走り初めへ。年が変わっても人間の中身が劇的に変化するわけではないので、出発するときには、いたっていつもどおり、落ち着いた気持ちで走りだしました。しかし、店のガラスなどに映り込む自分の姿が、昨日までのユニフォームと異なるというだけで、気分がパリっと引き締まるというのは不思議なものです。今年こそはあれを成し遂げてやろう。。的な思いが頭をめぐります。中学・高校で制服が変わった時、気合を入れてスーツに身を包んだ時、初めてプロ選手としてジャージに身を包んだ時、移籍して新たなジャージを受け取った時。。。これまで服が変わる時と生活の転機が重なっていた場面が思い出されます。

今年から日本での活動が減るということで、既成のメディアのみに頼っていては、皆さまに僕の活動を知ってもらう機会が減ります。これは僕が選手活動をする上で、決してプラスにはならないと考え、自らで情報発信に力を入れていきます。異なる文化をもつ人々の間で、ロードレースのような力をぶつけあう競技で生活をする。その上でどういったものを見て、聞いて、考えるのかというのは、それなりに希少価値があるものだと思うし、その経験は僕がこのロードレースという世界に求めてきたものでもあります。

とりわけ、僕はWebや、もっと一般的にテクノロジーというものが、世界をよりオープンで良いものへ変えていくという一つの信念をもっているが故に、比較的新しいメディア(blog、Twitter、Facebook、Instagramなど)を通して情報を発信する機会が多いです。これらの新しいサービスを一覧にして見渡せるよう、この度、友人たちの手を借りてnishizonoryota.comというまとめサイトを立ち上げることになりました。

ぜひ、新サイトに足を運んでください。
今年もよろしくお願いします

西薗良太